プロダクト発表 · 小互解読

Meta が Muse Spark 1.1 モデルを発表、複数のエージェント評価で GPT-5.5 と Opus 4.8 に匹敵

Meta AI の Chief AI Officer である Alexandr Wang 本人の言葉:業界トップクラスの agentic &コーディングモデルで、複数の agent 評価で GPT-5.5、Opus 4.8 と同格。API は入力 $1.25/出力 $4.25(百万 token あたり)。
早わかり
  • Meta Superintelligence Labs が Muse Spark 1.1 を発表:agentic タスク向けのマルチモーダル推論モデル。同時に Meta Model API のパブリックプレビューを公開し、C 向けには Meta AI/meta.ai の Thinking モードに搭載。
  • 機能の軸:主エージェントが並列サブエージェントをオーケストレーション、100 万 token のコンテキストを能動的に管理、デスクトップ/ブラウザ/スマホの computer use、コーディング、マルチモーダルなタスク処理。
  • Wang が公開した比較表:JobBench 54.7、MCP Atlas 88.1、HLE(ツール利用あり)62.1 など複数の agent 系列で GPT-5.5/Opus 4.8 と同格かそれ以上;コーディング系はトップクラスに肉薄。
  • 公式価格(従量課金):入力 $1.25、キャッシュ入力 $0.15、出力 $4.25(百万 token あたり);ウェブ検索 grounding は $2.50/千クエリ;長いコンテキストへの追加料金なし。
  • OpenAI SDK、Anthropic SDK、OpenCode/Claude Code などと互換;3 種類の API 形態は同一モデル・同一単価を共有。
Meta AI ブログ、Meta Model API のドキュメント・価格ページ、112 ページの評価レポート、そして Meta の Chief AI Officer である Alexandr Wang の 2026-07-09 のツイートスレッドに基づく。ベンチマークは公式/公式公表の表に準拠。
1発表

まずこの件をはっきりさせておく

2026 年 7 月 9 日、Meta Superintelligence Labs は Muse Spark 1.1 を発表し、このモデルを Meta Model API を通じて初めて外部の開発者に開放した。同日、Meta の Chief AI Officer である Alexandr Wang は率直にこう投稿した。

muse spark 1.1 is an industry-competitive agentic and coding model. across many agentic evals it rivals gpt-5.5 and opus-4.8. available now through the new meta model api and in meta ai. — Alexandr Wang、@alexandr_wang、2026-07-09

平たく言えば、これは「チャットがちょっと滑らかになった」程度の小さな改善ではなく、agent としての作業とコーディングに照準を合わせたモデルだということだ。複数の agent 評価において、公式は GPT-5.5、Opus 4.8 と同格まで持っていけると主張している。以下ではまず機能を一通り並べ、それから仕組み・数字の読み方・料金の計算方法を一つずつ展開していく。

2機能の全体像

結局何ができるのか:まず能力表を見る

この表を読み終えれば、記事の後半はそれぞれのマスを掘り下げているだけだとわかる。まず一通り目を通してから、下の動画とベンチマークに進むことをおすすめする。

位置づけ
agentic タスク向けのマルチモーダル推論モデル:ツール呼び出し、computer use、コーディング、マルチモーダル理解をまとめて強化。
マルチエージェント
主エージェントがコンテキストを集めて計画を立て、実行を並列のサブエージェントに割り振る。サブエージェントは担当範囲を守りつつツールを理解し、必要な時は主エージェントにエスカレーションする。
コンテキスト
1,048,576 token(約 100 万);能動的に管理:行動を記録し、初期の情報を呼び戻し、圧縮時には重要なステップを残す。
Computer use
デスクトップ、ブラウザ、スマホを操作できる。学習の狙い:スクリプトを書くべき時は書き、UI を操作すべき時は操作する、各ステップでまとめて複数のアクションを出せる。
コーディング
一般的な agent コーディング環境(プランニングモード、ゴール条件、サブエージェント、コンテキスト圧縮など)に適応;大規模リポジトリ、複数ターン、スクリーンショットで UI を検証。
マルチモーダル
画像を見る、動画を見る、ドキュメントを読む;知覚した細部は長いワークフローをまたいで保持され、ブラウザ/デスクトップの操作に直接使われる(単なる説明にとどまらない)。
API の能力
並列ツール呼び出し、ストリーミングのツールパラメータ、ターンをまたぐ推論、引用付きウェブ検索、構造化 JSON 出力、Files API、Prompt Caching、調整可能な reasoning_effort。
互換性
OpenAI SDK/Anthropic SDK/OpenCode/Claude Code など;Responses、Chat Completions、Messages の 3 種類のインターフェースで、同一モデル・同一単価。
どこで使えるか
C 向け:Meta AI App と meta.ai の Thinking モード。B 向け:Meta Model API のパブリックプレビュー(api.meta.ai/v1、muse-spark-1.1)。
初期パートナー
Replit、Box、Cline などがすでに試用中。

一言で言えば:まずプロジェクトマネージャーのように並列作業を割り振ることを覚え、次にデスクトップ/ブラウザ/スマホの操作とコーディングを同じ agent パイプラインに束ね、最後に「高スコア+相対的な低価格」の API を開発者に提供する、という流れだ。

3展開その一

Agent はどう働くのか:主エージェントが割り振り、サブエージェントが並列で動く

公式も Wang も「agentic なパフォーマンスとツール利用」を強みの方向として挙げている。仕組みは難しいものではなく、次の 3 ステップで理解できる。

  1. まず主エージェントが考えをまとめるコンテキストを集めて計画を立て、どのサブタスクに分割するかを決める。すべての画面操作を一人でやり切ろうとはしない。
  2. サブエージェントが並列で実行するそれぞれが担当範囲を守り、手元のツール(ネイティブツール、MCP、カスタムスキル)を把握する。手に負えなければ主エージェントにエスカレーションする。
  3. コンテキストを能動的に管理する100 万 token は詰め込んで放置するものではない。何をしたかを覚えており、以前の作業から事実を拾い上げ、いっぱいになりそうな時は雑談を圧縮して決定事項と未完了のステップを残す。
主エージェント
コンテキスト+計画
サブ A
コーディング/ツール
サブ B
ブラウザ/デスクトップ
サブ C
検索/検証
統合して納品

公式はさらに、新しいネイティブツール、MCP サーバー、カスタムスキルに対してゼロショットで汎化でき、ツールごとに個別に再学習する必要はないと強調している。WideSearch のグラフでは、同じレイテンシ水準でマルチエージェントのスコアがシングルエージェントを上回っており、並列処理は学習上の目標であって、単なる見た目の演出ではない。

WideSearch マルチエージェント vs シングルエージェント
公式図 · WideSearch:マルチエージェント(実線)のスコアがシングルエージェント(破線)を上回る
4展開その二

Computer use:デスクトップ、ブラウザ、スマホすべて操作できる

Wang はかなり具体的に書いている:desktop、browser、mobile を操作できる、と。学習の重点は「一手ずつクリックする」ことではなく、次を判断することにある。

  • 自動化してスクリプトを書く方が速いなら → スクリプトを書く
  • 直接 UI を操作する方が簡単なら → クリック・入力・スクロール
  • 各ステップでまとめて複数のアクションを生成できる、一手ずつクリックするのではなく
こう考えるとわかりやすい

インターン生にリモート操作できる端末を渡し、目標だけを伝える。App を開いて何度かタップするか、スクリプトを書いてメニューと在庫をまとめて調べるかは、本人が判断する。

公式のディナーパーティー デモでは、タスクの途中で人数・食事制限・在庫が変わっても、注文の段階で自分でそれに気づいて計画を変更し、人が改めて指示を出すのを待たない。

公式デモ · Agentic dinner party organization · 出典:Meta AI ブログ
Alexandr Wang のツイートスレッドに添付された computer use のデモ · 出典:@alexandr_wang
OSWorld 2.0 のコスト曲線
公式図 · OSWorld 2.0:横軸はタスク 1 件あたりのドルコスト、縦軸はスコア。青線=Muse Spark 1.1、同じスコア帯では概ねより低コスト
5展開その三

コーディング:大規模リポジトリ、複数ターン、スクリーンショットで自己検証

Wang はこれを実際の大規模コードベースのタスクにおける大きな一歩だと述べている。モデルは一般的な agent コーディングのセットアップに適応できるよう学習されている。公式デモではコーディング、画像確認、ツール呼び出しが一続きに組み合わされている。

公式デモ · OpenCode でサイトを構築し、スクリーンショットで不具合を見つけて bug を修正 · 出典:Meta AI ブログ
公式デモ · DeepSWE で複数の推論強度を自己テスト+分析ダッシュボード · 出典:Meta AI ブログ
Vibe Code と SWE Atlas
公式図 · Vibe Code Bench v1.1:72.2(前世代 19.7);SWE Atlas コードベース QA:42.0(前世代 24.2)
Meta 内部コーディング bench
公式図 · Meta Internal Coding Bench:1.1 は 68.3、Opus 4.8 は 69.0 でほぼ肉薄
6展開その四

マルチモーダル:細部を捉え、代わりに手を動かす

ドキュメント側の能力には、画像理解(写真/図表/ドキュメント/スクリーンショット)、動画理解、文書認識が含まれる。代表的な使い方は「この画像を説明する」ことではなく、知覚をそのままアクションにつなげることだ。

公式デモ · スマホで商品を撮影 → 画像から推論 → ブラウザで Facebook Marketplace に代理出品 · 出典:Meta AI ブログ

同じ週には Muse Image/Muse Video というメディア生成系のラインもあり、Spark の agent 系と補完関係にある。

サイト内の関連解説
Muse Image/Muse Video:agentic な画像生成と動画生成のプレビュー

画像生成の仕組みはそちらの記事を参照。本記事では Spark の agent/コーディング/API 系のみを扱う。

7ベンチマーク

複数のエージェント評価:どこで優位に立ち、どこが同格にとどまるか

以下の一覧表は Alexandr Wang のツイートに添付された画像から(Meta Muse Spark のプロダクトページとも一致)。数字はすべてそのまま並べてあり、切り替えクリックは不要。

Wang が公開したベンチマーク比較の一覧表
@alexandr_wang のツイート添付画像 · Muse Spark 1.1 と Gemini 3.1 Pro/Opus 4.8/GPT-5.5 の比較(ハイライトは各行の最高値)
カテゴリーベンチマークSpark 1.1前世代Opus 4.8GPT-5.5
AgentMCP Atlas88.182.282.275.3
AgentJobBench54.717.048.438.3
AgentToolathlon-Verified75.649.476.273.5
AgentOSWorld-Verified80.853.383.478.7
AgentHLE(ツール利用あり)62.150.457.952.2
AgentFinance Agent v257.2-53.951.8
CodingTerminal-Bench 2.180.067.382.783.4
CodingSWE-Bench Pro61.555.069.258.6
CodingDeepSWE 1.153.310.059.067.0
マルチモーダルCharXiv Reasoning88.488.989.984.8
マルチモーダルBabyVision76.339.981.283.6
この表の読み方

公式が最も自信を持って優位だと言えるのは:MCP Atlas、JobBench、HLE(ツール利用あり)、Finance Agent v2 などの agent 系で、1.1 は表の中でしばしば最高値かトップ 2 に入る。

同格の競争:Toolathlon、OSWorld は Opus に肉薄;Terminal-Bench は GPT-5.5/Opus よりやや低い。

まだ差がある部分:DeepSWE 1.1 の 53.3 は GPT-5.5 の 67.0 より低く、BabyVision も GPT-5.5 の 83.6 より低い。「全面的な圧勝」ではない。

前世代との比較:JobBench は 17.0→54.7、DeepSWE は 10.0→53.3、OSWorld は 53.3→80.8 と、伸び幅は大きい。

JobBench
公式図 · JobBench:1.1 は 54.7 で、Opus の 48.4、GPT-5.5 の 38.3 を上回る
MCP Atlas
公式図 · MCP Atlas:1.1 は 88.1 で、Opus/前世代の 82.2 を上回る
8価格と API

料金の計算方法と接続方法

Wang の言葉を借りれば「premium performance at low cost」。具体的な数字は Meta Model API の価格ページに掲載されており、従量課金で最低利用料も前払いもない。

$1.25
入力/百万 token
$0.15
キャッシュ入力/百万 token
$4.25
出力/百万 token
$2.50
ウェブ検索/千クエリ(token は別途計算)
Meta Model API の価格表
@alexandr_wang のツイート添付画像 · Meta Model API Pricing(公式価格ページと一致)
  • 長いコンテキストへの追加料金なし:ウィンドウがほぼ空でもほぼ満杯でも単価は同じ
  • Prompt Caching:プレフィックスがキャッシュにヒットした場合は cached input として課金され、レスポンス内の cached_tokens で確認できる
  • 3 種類の API(Responses/Chat Completions/Messages)は同一モデル・同一単価を共有;Responses が最も機能が充実しており、agent ワークフローに向く
  • レート制限(チーム単位):無料枠は 60 RPM/200 万 TPM;有料枠は 3000 RPM/400 万 TPM
  • システム側で挿入されるわずかなガイド用 token は課金対象外

API にそのまま備わっている機能

  • 並列ツール呼び出し+ストリーミングのツールパラメータ
  • ターンをまたぐ推論(reasoning はターンをまたいで持ち越せる)
  • ウェブ検索 grounding、インライン引用付き
  • 画像/動画理解
  • 構造化出力(schema に沿って JSON を出力)
  • Files API:一度アップロードすれば ID で参照できる
  • Prompt Caching でレイテンシとコストを削減
  • reasoning_effort はリクエストごとに minimal から xhigh まで調整可能

2 行の設定だけで試せる

连接参数
base_url = https://api.meta.ai/v1
model    = muse-spark-1.1
key      = MODEL_API_KEY(dev.meta.ai 申请)
最速

OpenCode/Cline などのエンドポイントを Meta に向けるだけ;ドキュメントによると Claude Code、Anthropic SDK のメッセージ形式にも対応しているという。

自分でループを書く

Responses API では previous_response_id で状態を継続でき、web_search も組み込める;function_call はローカルで実行してから結果を戻す。

“What’s most impressive about Muse Spark is how much it packs into one model: massive million-token context, full multimodal support, built-in search with citations, strong reasoning, top-tier coding abilities, structured output, and parallel tool calling - all in a clean OpenAI-compatible package.” — Amjad Masad、Replit CEO
9安全性

能力が上がった分、リスク評価もより厳しく

112 ページの『Muse Spark 1.1 Evaluation Report』にはこう記されている:緩和策を講じない場合、化学・生物兵器およびサイバーセキュリティの領域では Framework の「高リスク」閾値を排除できない;デプロイ時の緩和策を適用した後の残存リスクは「中程度以下」となる。制御喪失(loss of control)の領域は一貫して中程度以下。サイバーセキュリティ能力は 1.0 に比べて大幅に向上した一方、脱獄(jailbreak)/プロンプトインジェクションの ASR は明確に低下している。レポートからの抜粋:Cybench の pass@1 は 65.4 から 92.9 へ;StrongREJECT の脱獄 ASR は 25.2 から 0.5 へ;AgentDojo のインジェクション ASR は 11.9 から 0.7 へ;Agentic Misalignment は 47.7 から 1.1 へ。

10実際の使いどころ

誰にとって役立つか

agent プロダクトを作る人

並列ツール+百万規模のコンテキスト+主/サブのオーケストレーション;OpenAI/Anthropic 互換なので、既存の harness はエンドポイントを変えるだけで試せる。

コーディング agent/フロントエンド

大規模リポジトリ、スクリーンショットで UI を自己検証;内部の coding bench では Opus に肉薄;価格面でも長時間タスクに優しい(キャッシュ入力 $0.15)。

アプリをまたぐデスクトップ作業

デスクトップ+ブラウザ+スマホの computer use;途中で要件が変わる長いタスクが公式デモの重点方向。

マルチモーダルなタスク処理

動画/スクリーンショットをモデルに入力し、ブラウザを操作して出品やフォーム入力といった作業を完了させる。

利用できる場所:Meta AI App と meta.ai の Thinking モード;開発者は Meta Model API のパブリックプレビューから。同じ週の Muse Image/Video はまた別のメディア生成系ライン。

出典:Meta AI Blog『Introducing Muse Spark 1.1 and the Meta Model API』(2026-07-09)· dev.meta.ai のドキュメントと価格ページ · Muse Spark プロダクトページ · 『Muse Spark 1.1 Evaluation Report』· Alexandr Wang のツイートスレッド 2075218936266998230。デモ動画は pic.xiaohu.ai で自前ホスティング。