研究解説 · 小互解読

Gemma 4 テクニカルレポート:オープンモデルが「小パラメータ+思考できる+省メモリ」で大型モデルに真っ向勝負

Google DeepMind の Gemma 4 レポートは機能一覧ではない。本当に証明したいのはこうだ——数兆規模の MoE でなくても、人間の好みと STEM でフロンティアに迫れて、しかもオンデバイスに収まる。
⬡ レポートの核心(まずここを読む)

Gemma 4 の本筋は一言だけ——三つのエンジニアリングで「能力」と「コスト」を同時に有利な方向へねじり込む。

一つ目は知能を上げる:思考モード(先に推論してから答える)。二つ目はコストを下げる:ローカル/グローバルアテンションの配分、p-RoPE、KV 共有、K=V、QAT 量子化、MTP 投機的デコード。三つ目はモダリティを広げる:ネイティブに画像・文・音声を扱い、12B には「独立エンコーダを持たない」統合アーキテクチャを与えた。以下のモデル、表、Arena の順位はすべて、この一言に証拠を与えている。

01 知能を上げる

思考モード

数学・コード・STEM が大きく伸びる主エンジン。標準評価はほぼ常にこれをオンにしている。

02 コストを下げる

長コンテキスト+量子化+投機的デコード

コンテキストを伸ばしても KV を破綻させない。31B を約 64GB から約 19GB へ。デコードも加速。

03 モダリティを広げる

ネイティブマルチモーダル+12B 統合体

多くのサイズは凍結エンコーダを使う。12B は画像パッチと音声スライスを直接飲み込み、大きな重みを二塊減らす。

60秒でざっと
  • ファミリー:E2B(実効 2.3B)、E4B(実効 4.5B)、12B、26B-A4B MoE(約 4B 活性)、31B デンス。Apache 2.0。
  • Arena Text(2026-06-19):31B は Elo 1451、レポートはオープンなデンスで首位と主張。上位のより高い順位は数百 B〜T 級 MoE が多い。
  • Gemma 3 27B 比:STEM/コードの差は歴然。ただし表では 4 代がデフォルト thinking、3 代 27B は多くが non-thinking で、純粋なアーキテクチャ勝利とは読めない。
  • オンデバイスの物語:E2B は複数項目で 27B 級の能力に迫る(公式値)。音声エンコーダのディスクは 390MB→87MB。
arXiv:2607.02770『Gemma 4 Technical Report』を基に整理。数値はすべて公式の自己申告。本ページのインタラクションは仕組みの説明用で、PDF 原文の表を代替しない。
01

それはオープン界のどの問いに答えているか

2026 年のオープンランキングは超大型 MoE に占められがち。Gemma 4 が選んだのは別の道——デンスな中小サイズ+思考できる+デプロイしやすい。

このレポートを読むとき、「また 31B が出た」としか覚えないと、本当に争っている位置を見落とす。当時 Arena 上位のオープンモデルは、その多くが 300B、700B、1T、さらには 1.6T 総パラメータの MoE だった。Gemma はこの物語をこう書き換える——

問題大型モデルは強いが、ローカル/社内の私有デプロイには入らない・動かない
旧来のオープンな答え総パラメータを積み続けるか、明らかに一段弱いのを受け入れる
Gemma 4 の答え思考で加点+アーキで KV/重み節約+端からクラウドまで全サイズ網羅

だからレポートの「核心的な証拠」は、どこか一点の単独 SOTA ではなく、コンビネーションだ——31B デンスがより大きな MoE と同じ土俵に立つ(人間の好み)。小型モデルでもオンデバイスに載る(メモリ表+音声エンコーダのサイズ)。長コンテキストを力任せの KV 積み上げに頼らない(RULER/LOFT)。

HOW THE THREE LINES LOCK 思考モード AIME / コード / GPQA 「解答と推論」を上げる 効率スタック KV / QAT / MTP 「VRAMと遅延」を圧縮 ネイティブMM 画像+音声+12B統合 「扱える入力」を拡張 結果:小型でも人間評価+STEM+長コンテキストで勝負
三本の線は並んだ広告枠ではない。思考が点数を、効率が「載る・動く」を、マルチモーダルが入力の形を担う。一本欠けると物語は完結しない。
02

まずサイズを一つ選び、それが誰として設計されたか見る

下の五つのモデルを押してみて。同じファミリーでも役割はまるで違う。

E2B:オンデバイス入門、実効 約 2.3B

per-layer embeddings(Gemma 3n と同系)を使い、総パラメータは大きいが「実効」で 2.3B と数える。150M 視覚+305M 音声エンコーダを内蔵。レポートはこれを Gemma 3 27B と比べ、「パラメータは約一桁少ないのに複数項目で肉薄」と主張する。

0.8 GB量子化後の重み規模(32k テキスト、Table 3)
4:1ローカル/グローバルアテンション(他の 5:1 よりさらに省)
AIME 37.5G3 27B の 20.8 よりなお高い(ただし双方で思考の条件が異なる)
76MMTP ドラフトヘッド、投機的デコード専用

E4B:オンデバイス主力、実効 約 4.5B

同じく小エンコーダ+積極的な量子化。視覚評価では、列挙項目すべてで Gemma 3 27B を下回らないと記す(例:MMMU Pro 52.6 vs 49.7、MATH-Vision 59.5 vs 46.0)。長コンテキストでも複数項目で既に 27B を上回る。

2.3 GB量子化後の重み規模(Table 3)
128k RULER 86.6G3 27B の同項目は 66.0
音声 87MB量子化エンコーダのディスク、3n の 390MB に対し
CoVoST +10%同クラス 3n 比の翻訳相対向上(公式)