プロダクト発表 · シャオフー解説

1XがNEOの新型ハンドを発表:作業しながら、手の中のものを感じ取れる

腱駆動のハンドは全関節が外力を逆感知でき、指先の位置決め精度は±0.2mm、専用生産ラインの年間生産能力は1万台を計画。
1分でわかる概要
  • 1X Technologiesが新世代のNEOヒューマノイドロボット用ハンドを発表。合計25自由度——指と掌部に22個、手首に3個。
  • 腱駆動方式を採用し、減速比は約5:1〜15:1と低く、全関節が力制御かつ逆駆動可能。位置指令を実行するだけでなく、外部からの力を感知できる。
  • 指先と掌には高解像度の触覚スキンが搭載され、法線力・接触位置・せん断力を計測。滑りをリアルタイムで検知し、握り方を即座に調整できる。
  • ピークトルク:親指の手根中手関節が3.5Nm、指の中手指節関節が2.6Nm、指先の屈曲力は最大45N、手首トルクは17.75Nm、位置決め精度は±0.2mm。
  • すでに数百台のハンドが生産ラインから完成しており、専用生産ラインは2026年に年間1万台の生産能力を計画。ハンド全体はIP68防水・食品グレード素材で、自分で洗浄できる。
本記事は1X Technologies公式発表ページの解説です。文中のトルク・精度・耐久サイクルなどの性能データはすべてメーカー自己評価によるもので、年間1万台の生産能力は2026年の計画目標(予測値)です。
1誰が何を発表したか

1XがNEOに新しいハンドを与えた

1X Technologiesは2026年7月9日、NEOヒューマノイドロボット向けの新世代ハンドを発表した。25自由度・全関節力制御・逆駆動可能な腱駆動式の生体模倣ハンドだ。

このハンドの最も特別な点は、動作しながら自分が何をしているかを「感じ取れる」ことだ。ほとんどのロボットハンドはこれができず、位置指令どおりに手探りで掴むしかない。
25自由度のうち、繊細な動作を担う22個の指・掌部の関節と3個の手首の関節は、すべて力フィードバックを備え、逆駆動が可能。指先の位置決め精度は±0.2mmに達し、専用生産ラインは2026年に年間1万台の生産能力を計画している。
1X NEOの25自由度ハンド
1X NEOの新世代ハンド、25自由度。写真:1X Technologies
2まずは何ができるかを見る

まずは何ができるかを見る

原理の話に入る前に、まずはこのハンドが実際にどこまで操作できるかを見てみよう。公式デモで披露しているのは、いずれも指の連携が必要な繊細な作業だ。

ブドウの房から一粒ずつ摘み取り、色で仕分けまでできる。動画:1X Technologies
レゴを組み立てる
電球を回して外す
ジャケットのジッパーを上げる
財布からコインをつまみ出す
レゴを組み立てる財布からコインやネジを拾う電球を回して外す ドライバーを使うジャケットのジッパーを上げる色でブドウを仕分ける お茶を注ぐ柔らかいボールをキャッチするUSB-Cを挿す ワイングラスを持ち上げるティッシュとスプレーで台を拭く手話をする

これらは特別に調整したデモ用モーションではない。「十分な数の、それぞれ独立して力制御できる関節」を人の手のスケールに収めた、自然な結果だ。

3従来型グリッパーの限界はどこか

従来型グリッパーの天井はどこにあるか

今回の発表の重みを理解するには、まず現在のヒューマノイドロボットのハンドがどこで詰まっているかを見る必要がある。市場でよく見る方式は位置制御式の二指グリッパーだ。目標位置を与えれば、そこまで開閉するだけである。

開発者にとって、こうしたハンドが公開する動作はたった3つ——掴む、置く、押す。このハンドに搭載されるすべてのアプリケーションは、結局この3つの動作の組み合わせであり、しかも目を閉じたまま行っているようなものだ。天井はソフトウェアの中ではなく、腕の先端にある。

掴む pick
置く place
押す push
ここまで

より根本的な問題は伝動機構にある。モーターの小さなトルクを十分な力に増幅するため、この種のハンドは100:1〜200:1という高い減速比をよく使う。その代償は、外部から加わる接触力がモーターに伝わり戻る前に、ギアの摩擦で食い尽くされてしまうことだ。ハンドは自分が何に触れているか、どれだけの力を使っているかをまったく感知できず、エンジニアは外側にカメラを設置して指の動きを推測するしかない。

4コア・イノベーション

このハンドは触れながら、何に触れたかを知ることができる

今回NEOが採用した発想は、動作を実行すると同時に、外界の反応をそのまま読み取り戻すというものだ。

コア・イノベーション · 力の透過性

NEOのハンドは腱駆動方式を採用し、5:1〜15:1という超低減速比と組み合わせることで、25個すべての関節がネイティブに力制御され、逆駆動が可能になっている。指を押せば、その力に応じて素直に屈服しつつ、同時にどれだけの力で押されたかを正確に報告する。力はハンドから出力され、情報は同じ物理的な通路を通って流れ戻ってくる。1Xはこの特性を「力の透過性」(force transparency)と呼んでいる。指を一押しするという動作そのものが、一回の測定になるのだ。

力 · 動作出力 → 前腕モーター 力制御関節 指先 情報 · 接触フィードバック ←
動作は前腕モーターから腱を経て指先まで伝わり、外部からの接触力は同じ腱を通ってそのまま流れ戻る。同じ経路を、双方向に流れる。
たとえて言えば

ニュートラルに入れた車のようなもので、押せば動くし、その抵抗からどれだけ重いかも感じ取れる。これがPレンジに入れっぱなしの車になると、どう押してもびくともせず、力もまったく感じられない。従来のロボットハンドの高い減速比は、まさにこのガチガチのPレンジに相当する。

ここで重要なのが腱駆動だ。モーターは関節の中に組み込むのではなく前腕に配置し、まるで腱のような一本一本のワイヤーで指の関節を遠隔操作で引っ張る。これは操り人形の芝居に少し似ていて、操作レバーのモーターは離れた場所にあり、細い糸で人形の指を動かす。指自体はとても軽く作れるわけだ。

1X Tendon Drive駆動プーリーのクローズアップ:低減速比の腱プーリーが指を引っ張り、外力が関節を逆に押し戻すこともできる。動画:1X Technologies
位置制御グリッパー
  • 書き込みのみで読み取れず、指令位置に到達するだけ
  • 100:1〜200:1の高減速比
  • 接触力はギアの摩擦で食い尽くされる
  • 外部カメラでハンドの動きを推測するしかない
NEO 腱駆動ハンド
  • 書き込みも読み取りも可能、動作そのものが測定
  • 5:1〜15:1の超低減速比
  • 25個の関節すべてが力制御、逆駆動可能
  • 力と情報が同じ腱の上を双方向に流れる

さらに、背後で静かに動き続けているもう一つの読み取り機能がある。固有受容感覚(proprioception)だ。すべての関節が閉ループ制御になっているため、ハンドは見なくても自分が今どんな姿勢に曲がっているか、各所でどれだけの力を使っているかがわかる。人が目を閉じたままでも両手の人差し指の先をぴたりと合わせられるのと同じことだ。

5関節の配分

25個の関節をどう配分すれば、器用さと力強さを両立できるか

自由度とは、関節が独立して動かせる方向の数を指す。1自由度はおおよそ、単独で制御できる可動点1箇所に対応する。25自由度ということは、このハンドには独立して動かせる箇所が25個あるということだ。数の多さ以上に、どう配分するかが重要になる。

指+掌部 · 22 DOF
手首 3
22個の指・掌部の自由度は人の手の解剖学的な比率に沿って配分されており、実際に対向動作ができる親指を重視している。残り3個の自由度は手首にある。1Xによれば、この配分は器用さと、製造のしやすさ・制御のしやすさ・保守のしやすさとのバランス点だという。
ハイライトは対向動作が可能な親指、手首の3自由度は下部にある

力制御の自由度が十分に多く、しかも人の手のスケールに収まっている結果、器用さと力強さを両立できている。以下がこのハンドの具体的なスペックだ。

3.5 Nm
親指の手根中手関節のピークトルク
2.6 Nm
指の中手指節関節のピークトルク
45 N
指先の屈曲力の上限
17.75 Nm
手首トルク
±0.2 mm
位置決め精度
IP68
ハンド全体が防水、食品グレード素材で自分で洗浄可能

この力があれば、手のひら全体での握り、工具の使用、物を持ち上げる、ドアを開ける、荷物を満載したカートを押す、負荷がかかった状態での精密なつまみ動作まで、器用さを保ったままこなせる。±0.2mmの位置決め精度によって、実際の人間の作業の大半が発生する「小さな部品」のスケールで作業できるようになる。

片手でケトルベルを持ち上げる。レゴを組み立て、コインをつまむのと同じ手が、重い物も持ち上げられる。動画:1X Technologies
6指先のスキン

指先の最後の0.5ミリ

力制御だけでは足りない。指先の最後の0.5ミリの情報は、スキンで補う必要がある。NEOの指先と表面には高解像度の触覚スキンが覆っており、常に3つのことを計測している。

法線力物体に垂直方向にかかる力の大きさ
接触位置物体が指先のどの点に触れているか
せん断力物体が指面に沿って滑る横方向の力、滑りの最初のサイン

このスキンの最も直接的な用途は、滑りをリアルタイムで検知することだ。物体が滑り始めた瞬間、せん断力チャンネルがそれを読み取り、力制御関節が即座に握力を締めるか調整して、滑り落ちる前に安定させる。

せん断力チャンネル
滑りの開始を感知
力制御関節
リアルタイムで握力を調整
安定した握りを回復

視覚だけに頼っていては、これは実現できない。特に透明・壊れやすい・変形する・遮られている物体を相手にする場合はなおさらだ。公式デモでは、接触力の法線マップ、握手をする際の圧力ヒートマップ、そして壊れやすい折り紙の鶴を潰さずにつまみ上げる様子が見られる。このスキン層は内部のセンサー、背後の腱と一体で設計されており、機能を持った素材そのものと言える。

指先で小さな物をつまみ上げる。右側の画面には各指の触覚アレイがリアルタイムで表示され、圧力・接触位置・せん断力がすべて読み取られている。これが「手が感じる」ということの実態だ。動画:1X Technologies
7十分頑丈で、十分安全

ハンマーで叩かれたら、引き出しに挟まれたらどうなるか

触れることで学習するハンドは、繰り返し触れられても壊れないタフさと、人のそばにいても十分安全であることの両方が求められる。

このハンドの安全性は、その「従順さ」から来ている。極めて低い減速比に加え、腱駆動と指先の低い慣性により、外部からの衝撃が安全に指を逆方向へ押し、そのまま吸収される。公式のスローモーション映像では、指が以下のような状況に遭遇したとき、いずれも素直に受け流している。

叩かれるハンマーで叩かれる引き出しに挟まれる

信頼性はすべてのサブシステムに設計として組み込まれている——腱の配線、軸受け、指の構造、ケーブルの取り回し、触覚の統合、電子部品、組み立て工程。部品と指全体のアセンブリはいずれも百万回規模のテストサイクルを経ており、駆動ユニットは極端な温度でのテストを受け、手首の関節は高負荷下で200万回以上のサイクル検証をクリアしている。ハンド全体はIP68まで密閉されており、食品グレードの素材を使っているため、汚れたら流し台のそばで自分で洗える。

耐久テスト台。一本の指が開閉を繰り返し、画面にはリアルタイムのセンサー数値が表示されている。百万回のサイクルは、こうして一回一回積み重ねて磨き上げられたものだ。動画:1X Technologies
200万回+
手首関節の高負荷耐久検証サイクル数
百万回規模
部品と指アセンブリ全体のテストサイクル数
8作れてこそ意味がある

作れることこそが、本当の参入障壁だ

最後の数字、そして1Xが強調する戦略的重点——それが生産能力だ。

まず、これらの力をハードウェアがどう支えているかを説明しよう。モーターは前腕、つまり人の手の握力の大部分が生まれる位置に搭載され、自社開発の腱が手首を通して力を伝え、指を引っ張る。だからこのハンドは軽く作れるのに大きな力を出力でき、長時間連続で動作しても温度が暴走しない。

前腕の内部。びっしりと並んだモーターと腱プーリーがここに隠されており、一本一本の腱が手首を通って指を引っ張る。力の源を遠くに置くことで、ハンドは軽くて力強くいられる。動画:1X Technologies

ハンド全体はNEO本体の一部として深く統合されている——自社開発モーター、専用電子回路、内蔵センサー、独自の腱システム、コンパクトな伝動機構、ハンド専用ファームウェア。腱の素材から、最外層の柔らかいポリマー、スキン、触覚センサースタックに至るまで、すべてのハンドが自社の生産ラインでエンドツーエンドに作られている。

戦略的重点 · 生産能力

すでに数百台のハンドが生産ラインから完成しており、専用生産ラインは2026年に年間1万台の生産能力を計画している。生産能力こそがこの発表の本当の重点である理由——規模を出せないハンドでは、規模のある実験を回せない。規模のある実際の把持データがなければ、実用的な操作モデルを訓練できない。ハンドをどれだけ作れるかが、操作モデルがどれだけ速く学習できるかを直接左右するのだ。

数百台
すでに生産ラインから完成したハンドの台数
1万台
2026年専用生産ラインの計画年間生産能力
私たちの目標は、書類の上で見栄えのするハンドを作ることでは決してありません。これらのハンドは集中的なエンジニアリングの成果であり、目的はヒューマノイドロボットを本当に役立つものにすることです。あらゆる重要な指標において、人間の能力に追いつくか、それを上回るようにしたい。このハンドを手に入れたことで、NEOは重要な節目を越えました——ロボットは今や、人が日々手で行っていることをこなせるのです。これは業界がずっと待ち望んでいたものです。 Bernt Børnich、1X創業者兼CEO
本記事は1X Technologies公式発表ページ「An API to the Physical World」(2026年7月9日)の解説です。性能データと生産能力計画はいずれもメーカー発表によるもので、年間1万台の生産能力は2026年の計画値です。原文とデモ動画:1x.tech/youtu.be/QRyXV3csReA。